体にできた「できもの」
こんにちは!
BiBi犬猫病院の櫻井です。
これからホームページ内のブログを通して、犬や猫を飼っている方々に、いろんな病気や症状をご紹介していこうと思います!
病気に関する知識を持っていると、一緒に暮らしている大切な家族であるわんちゃんねこちゃんに突然何か異常が起きた場合も、少し冷静に対応できるようになるかもしれません。どういう病気かを知ることでどういう検査・治療が必要かを見当つけることもできます。もちろん、何かおかしいと思ったら病院に相談していただけると助かります。病気に対して受け身ではなく、積極的に知ることで大ごとになる前に解決できることもありますので、この機会に病気に関しての様々な知識をつけていきましょう!そのお手伝いをさせていただくことも我々の仕事です!大いに動物病院を利用してください!
と、前置きが長くなってしまいましたが、今回最初のお題は体表腫瘤です。つまり体の表面にできた「できもの」です。
簡単にいうと「できもの」とは…
1、どこにでもできる
2、何歳でもできる(もちろん加齢とともに増えますが)
3、いいものも悪いものもある
みたいな感じです。
詳しくいうと、
1、どこにでもできる
→ 目で確認できる臓器や構造全てにできものができる可能性があります。例えば、まぶたにはマイボーム腺腫、口には扁平上皮癌、お腹には乳腺腫瘍、肛門腺にはアポクリン腺癌など、それぞれの部位にある組織が腫瘍化することがあります。
2、何歳でもできる
→ 若くしてできるできものとして、ミニチュアダックスフンドの消化器型リンパ腫や犬の皮膚組織球腫、骨肉腫などがあります。もちろん加齢とともに腫瘍ができる確率は増加します。
3、いいものも悪いものもある
→ これができものができた時に一番大事なポイントかもしれません。それらを判断するためには細胞診検査が必要ですが、後で詳しく述べます。
歳をとってきた動物の体にできたできものを「イボ」として様子をみる方がたまにいらっしゃいます。確かに「イボ」と呼ばれるものも中にはあります。しかし、できものを見た目で判断してはいけません。というより、見た目ではそれがいいものか悪いものかは判断できません。いいものか悪いものかを判断することは、この先の治療計画を立てる(治療をすべきか、様子を見ていいものか)ためにとても大切なことです。そのために最初に行う重要な検査として、細胞診検査があります
細胞診検査とは、細い針をできものに刺して、そのできものを構成している細胞を採取して顕微鏡で観察する検査です。
この検査の最大のメリットは「このできものがいいものか悪いものかを動物にあまり負担をかけずに判断できること」です。
細い針をできものに刺す検査なので、基本的には無麻酔で検査できます。しかし、できものの場所が目の近くや口の中などの場合や、動物が緊張してしまい暴れてしまう場合などは鎮静が必要な場合があります。
「いいもの」とは炎症や良性腫瘍をいいます。「悪いもの」とは悪性腫瘍、いわゆる癌とか肉腫と呼ばれるものです。炎症や良性腫瘍であれば、治療の第一選択として薬による内科治療や切除による完治を目的とした外科治療が挙げられ、適切な治療をすれば基本的には完治します。それに対して悪性腫瘍であれば、完治を目的とした拡大切除などの外科治療や抗がん剤や抗炎症薬を用いた内科治療、放射線治療などが挙げられ、それらのうち1つ、もしくは組み合わせて治療することになります。完治できる場合もありますが、難しい場合もあります。
以上のように治療方針や予後が全く異なりますので、「いいもの、悪いもの」を鑑別することがいかに大事か、つまりは細胞診検査がいかに重要かが少しでも感じていただけるとありがたいです。
また、細胞診検査のもう一つのメリットは「そのできものが何なのかを具体的に知ることができる、こともある」ところです。「こともある」っていうところが引っかかりますが、大体の腫瘍は細胞診検査で病名が分かるか、それに近いところまでは分かります。例えば皮膚組織球腫やリンパ腫、肥満細胞腫などは細胞診検査で判断できますし、ある程度のところまで分かれば治療方針を立てることもできるかもしれません。
しかし、細胞診検査はあくまでできものから「細胞」をとってくる検査なので、そのできものの全体を把握することができないため、そのできものの広がりや発生部位は分かりません。また、細胞同士が密に接着していると細胞自体が採取できない場合もある、といったデメリットもあります。
以上のことから細胞診検査には、検査としての限界はありますが、動物にあまり負担をかけずに多くの情報を得ることができるため、「できもの」に対して最初に行う検査としてとても重要な検査になります。体にできた「できもの」を「イボ」と判断せず、病変が小さいうちに細胞診検査を行って、早期治療を心がけましょう!